初日の演習その1:細胞モデルのいろいろ 銅谷賢治 1.Hodgkin-Huxleyモデル まだイオンチャネルの分子構造など誰も見たことがなかった時代に、膜の上に 開いたり閉じたりするゲートのようなものがあり、しかもゲート要素4つがひ と組みとなっと、それらすべてがオープンになるとイオンが通過できるように なる、という驚くべき洞察力により導かれたモデル。 A. L. Hodgkin and A. F. Huxley: A quantitative description of membrane currents and its application to conduction and excitation in nerve. Journal of Physiology, 177:500-544, 1952. 1) プログラム:cm.m, hh.m, ml.m これは、MATLABで微分方程式系のシミュレーションを行うサンプルである。 >>cm init で初期設定がされ、 >>cm run でシミュレーションが走る。Hodgkin-Huxley方程式の実体は、hh.mの中で定義 されている。これが、cm.mの中で、 [T,X] = ode23s( 'hh', [t0 t1], x0, odeopt, Inp); という形で指定され、時刻t0からt1まで、初期状態x0から、Inpを入力として シミュレーションが行われ、膜電位やゲート変数の時系列がXという行列に入 力される。この場合、シミュレーションの時間刻みはMATLAB自動的に決めてく れて、スパイクの立ち上がりなど誤差の出やすいところでは、時間刻みが短く 設定される。Xの各行に相当する時刻が、ベクトルTに書き出される。 一定時間ステップの出力が欲しい場合は、[t0 t1]のかわりに、t0:dt:t1とす ると、内部的には可変刻みを使って、出力はdt刻みに変換される。 シミュレーションの各ステップごとに、ode23sは xdot = hh( t, x, flag, Inp); を呼んで状態変化を計算する。ここでx=[v,m,h,n]はHHモデルの変数、Inpは入 力電流で、定数、あるいは [ t1,I1; t2,I2; t3,I3, ...] という形のタイムテーブルが使える。後者はパルス刺激などのシミュレーション に便利。 実際にいろいろな刺激パターンに対する細胞の応答を見るには、 >>global Inp として、cm.mの中で定義された変数Inpにアクセスできるようにした上で、 >>Inp = 10 とか、 >>Inp = [0,0;50,20;100,0] など、設定した上で >>cm run してみる。 2) 実習課題 a. 刺激電流pのレベルを変えた時に、細胞の振る舞いがどう変るか、例えば電流 ─周波数応答曲線を描いてみる。 b. hh.mの中で定義されているパラメタ、例えば各イオン電流の大きさを表す gna, gkなどを変えると、細胞の振る舞いはどう変るか? などして、HHモデルに親しんでみてほしい。 3) 応用編 細胞モデルのパラメタを変えて行ったときに、スパイク発生、多安定性、バー スティング、カオスなど、どんな振る舞いが起るかに関して、非線形力学系の 分岐理論の立場からさまざまな解析が行われている。入門としては、 Rinzel, J. and Ermentrout, G. B.: Analysis of neural excitability and oscillations. In C. Koch and I. Segev, eds. Methods in neuronal modeling (2nd edition) MIT Press, 1998. がお奨めで、その中で使われているMorris-Lecarモデルのシミュレーションは、 >>cm init ml とすると、hh.mの代りにml.mが呼ばれるようになり、試してみることができる。 2.(Leaky) Integrate-and-Fire モデル 1) プログラム: lif.m, lint.m >>lif init >>lif run で、上記と同じようにシミュレーションが走る。 ここでは、ひとつスパイクが発生て膜電位がリセットされたところから、 [ T1, X1, te] = ode23( 'lint', [t,ts(end)], x, odeopt, Inp); という関数で数値積分をし、膜電位が閾値を超えたことろで抜け出すと いうオプションを odeopt = odeset('Events','on') およびlint.mの中の case 'events' % For zero corssing detection というところで設定している。 2) 実習課題 a. v0, v1, tauなどのパラメタを変えた時に、電流─周波数応答がどう変るか 調べてみる(これは、1細胞の場合では解析的に求まるはずである)。 b. 入力にノイズを加えた場合、出力スパイク間隔はどうばらつくか? 3) 応用編 ここでは、細胞1個しかシミュレートしていないが、複数の細胞のネットワー クを作り、ある細胞がfireした瞬間、あるいは一定の時間遅れを持って多の細 胞にシナプス入力が入るようにするとどうなるか。