3日目:カラム間,領野間の双方向結合と隠れ状態推定 (2日目午後後半) 担当:岡田真人・池田思郎 1.ねらい 視覚野には低次野から高次野へのフィードフォワード結合だけでなく,バック ワード結合や領野内の水平結合が存在することが解剖学的に知られている.古 典的には,これらのフィードバック結合は注意や学習などに用いられ,知覚や 認識にオンラインで用いられているのではないと思われていた.しかし,最近 の生理学的な知見から,このようなバックワード結合や水平結合がオンライン での視覚情報処理に重要な役割をはたすことが示唆されている.ここではこの 仮説を生理学的および理論的に検討する. 2.講義内容について 2日目午後後半の講義. 脳の情報処理を理解する場合,外部から直接観測できる部分と直接観測できな い部分(隠れ変数:Latent VariableあるいはHidden Variable)に分けることに よって,見通しのよい理解が得られることが多い.ここでの講義では,この隠 れ変数の考え方を紹介し,2日目の内容であるスパースコーディングとの関連 や,その他の脳の学習理論とのつながりを議論する. 3日目午前中前半の講義. ニューロンのスパイク頻度を指標として活動をモニターし、単一ニューロンや 皮質のある部位がどのような視覚情報処理に関わっているかを調べる研究が数 多く行われてきた。その結果視覚系は並列階層的に構成された多くの領野から 成り立っており、低次の領野から高次の領野に向かうにしたがい受容野が拡大 すると共に、ローカルな特徴からよりグローバルな視覚パターンの検出が行わ れるという概念が成立した。このような概念は非常に多くの実証的な研究にも とづくものであり、その内容について正しく理解した上ではじめて何が足りな いのかが明らかになるであろう。本当に新しいことをやるためには歴史とその 上に成り立つ現状の分析が不可欠である。以下ではこれまでの視覚皮質の構成 についての研究を振り返り、そこから今何が問題になっているかを浮かび上が らせるための思考の断片をある程度道筋がつくように並べていきたい. 3日目午前中後半の講義. 結合マルコフランダム場(MRF)モデルについて述べる.2日目の講義で議論さ れたようにV1野の受容野サイズは小さい.この小さな受容野を統合して我々の 知覚は形成される.この統合メカニズムを結合MRFモデルにもどづき議論し, そのためには入力画像に直接含まれない隠れ状態を導入する必要があることを 述べる.結合MRFモデルはカラム間の双方向的相互作用を仮定したアナログニュー ラルネットで実現することが出来る.このモデルを支持する心理学的知見や生 理学的知見を紹介し,このモデルを領野間の双方向的なモデルに拡張するため には何が必要かを議論する.そのために提案された位相を用いた領域ベース MRFモデルを紹介し,その神経回路での実現を議論する.このモデルは細胞の 発火の同期性やコヒーレンスを用いるので,4,5日目の講義とも深く関係し ている. 3.必読文献 2日目午後後半 Hinton, G.E., Dayan, P., Frey, B.J., Neal, R.M. 1995 The wake-sleep algorithm for unsupervised neural networks. Science 268, 1158-1160 3日目午前前半 小松英彦 視知覚における脳のダイナミクス、日本神経回路学会誌 5:178-184, 1998. 3日目午前後半 配布テキスト